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俺にはどうしても伝えたいことがあった。 あの戦いを終えた後に伝えようと決めていた。 だがお前はそれを伝える前に逝ってしまった。 伝えないようにも伝えられない。 この『好きだ』という思いは…… お前が死んで十余年が経った今でも、お前を忘れた日は一日たりともない。 妻と娘を持った今でさえ一度も。 お前を忘れようと躍起になって研究や仕事に打ち込んだ時期もあった。 だが、忘れるどころかお前を想う時間が増えるばかりだった。 妻には浮気を疑われ、家族を省みろと責められた。 お前のせいでは決してないが、俺にとってお前はそれほどの存在なのだと改めて思い知った。 どう足掻いてもお前を想い切れないと悟ったからこそ、俺は離婚届にサインした。 妻にも娘にも悪いとは分かっていた。 全ては俺自身が悪いのだとも。 そして何より、お前に言えなかったというそのことが心残りで仕方が無かったのだ。 離婚に関しては後悔はしていない。 彼女ならば新しい人生をしっかりと歩んで行くだろう。 芯の強い女だ。 俺と一緒にいるよりずっといい人生を送るだろう。 金で解決するのは本意じゃあないが、断られても慰謝料を送るつもりでいる。 娘には完全に嫌われてしまったようだ。 ……まぁ仕方のないことだろうが。 俺としては愛しているのだが伝わらないものだな。 久方ぶりに日本に来たことで感傷的になってしまったようだ。 ポルナレフの情報と安否も気掛かりだ。 近いうちにイタリアへ飛ばねばならんかもしれん。 墓参りなんてされても嬉しくねぇとは思うが、お前にあの時言えなかったこの言葉を言わせてくれ。 「花京院、お前が好きだ」 【了】 |