そりゃあんたが好きだから。(R/A/D/W/I/M/P/Sの「そりゃ君が好きだから」より)





「あんたに会えたのがスタンド能力のお蔭だろうが何だろうがどうでも良いが
 俺はあんたに出逢えたことと、この能力に感謝してる。
 何でってそりゃ、あんたが好きだからだ。決まってんだろ?」
「お前…バカだろ。」
「ヒデェなぁ〜!でもま、言うなれば『露伴馬鹿』?」
「僕がバカみたいに聞こえるからやめろッ!!」
「はいはい。ほら、すぐ赤くなる〜。可愛いなぁ、ホントあんたは。」
「黙れッ!…書き込むぞ…?」
「えーと…それは遠慮しときます。黙るよ。」
「分かれば良い。」


今日もまた、傍から見ればどうでも良いようなやり取りがなされている。
二人は付き合い始めてまだ日も浅いが、康一と由花子に勝るとも劣らない傍迷惑なカップルだ。
街で会えば(大抵は裕也が臭いで見つけだしているのだが)痴話喧嘩で大騒ぎをするし、
ドゥ・マゴでお茶をしていてもこの通り、彼らの会話は(特に裕也だが)周りには聞くに堪えないほど甘い。
少し離れたテーブルでは仗助と億泰と康一と、そして不本意ながらも由花子が学校帰りのお茶を楽しんでいた。
しかし聞こえてくるどうしようもない会話の内容に閉口していた。


「なぁ〜アレってよぉ〜。」
「何だよ、億泰。」
「わざとやってんのか?」
「違うと思うよ。多分…」
「本当に迷惑しちゃうわ。ねぇ、康一君?」
「う、うん。そうだよね…」
「あーあ、こっちもかよ〜。億泰、もう行こうぜー?」
「んー?お〜。じゃ、また明日なぁ。」
「うん、また明日。気を遣わせちゃってごめんね、仗助くん。」
「いーよ、また明日な!康一。」

手を振って見送る康一と対照に、紅茶の入ったカップに口を付けていた由花子は心の中で
(やっと邪魔ものが居なくなったわ…)
と表には出さず、ひそかに嬉しく思っていた。
しかし彼女の幸福な時間はそう易々とはやって来なかった。

「なぁ、お前らはお互いが出逢えたことを偶然だと思うか?それとも運命だと思う?」

不意に投げかけられた質問に康一と由花子は思わず顔を見合わせて赤面した。

「裕也!康一君が困ってるじゃあないか!…だが聞いてみたくもあるな。」
「だろぉ?だってこんなに思い合ってる二人っていったら俺ら意外にはコイツらしかいないぜ?」
「…それ本気で言ってるんだよね、噴上君。ほんとスゴイや…」
「ん?どうした康一?」

由花子は満更でもないように頬を染めていたが、康一はがっくりと肩を落としていた。
そして露伴はそんな二人の様子をスケッチしていた。
裕也の催促により康一はモゴモゴと話しだした。

「ぼ、僕は運命、なんじゃあないかなぁと思います。スタンドが発現したのだって意味があってのことだと思うし。
 何より、僕自身がそう思いたいんです。由花子さんが好きになってくれたことも、僕が好きになったことも。」
「康一君…!そうよねっ!由花子もそう思います…!」
「ほんと?嬉しいなぁ!」

二人だけの世界に入ってしまったのでそれはそれで放っておいて、裕也は勝ち誇った顔で露伴を見た。
露伴はスケッチを終えると、フンッと鼻を鳴らして席を立った。
その後ろを裕也は嬉しそうについて行った。




「なぁ〜?恋人同士ってのはやっぱ互いのことを運命だと感じるんだよ!お前もそうなんだろ?」
「五月蝿いっ!何を馬鹿なこと言っているんだ。」
「言ってくれよ、あんたもそう思うって。」
「断る。」
「ちぇ〜。…まぁ良いか。」

いつになく裕也が聞きわけが良いのも、いつになく顔に嬉しさを見せている露伴のせいだろう。
その顔は真っ赤に染まっていて傍から見れば熱でもあるのかと尋ねたくなるほどだ。
裕也は裕也で締まりのない貌でニヤけていた。

二人はそのまま下らない言い合いをしながら、露伴の家へとやってきた。
学校帰りに裕也が露伴の家へ行くことはもはや日課と化していて、取り巻きたちもその邪魔をすることは無い。
彼女たちは裕也のことを好きではあるが、彼が幸せになるのなら自分たちは身を引く覚悟があるそうで、
裕也が正直に露伴とのことを話すと素直に身を引いた。
その言葉通り、学校にいる間以外の時間は決して彼らの邪魔をしない。
あまりに不釣り合いな相手ならば邪魔をする気はあったのだが、露伴は彼女たちのお眼鏡に適ったようだ。
今ではこそこそと後をつけて、蔑ろにされがちな裕也を陰ながら応援している。


「お邪魔しま〜す。」
「家主より先に上がり込むやつが居るかッ!」
「おっと、悪ィ。」
「仕方のない奴だ……」

叱られて謝ると、裕也は役者染みた大袈裟な身振りで露伴に恭しく手を差し伸べた。
露伴はその手をぞんざいに掴むとサンダルから足を抜いて、さっさと上がって奥へ行ってしまった。
つれない様子に肩をすくめて、サンダルと自らの革靴をきちんと揃えてから恋しい人の後を追った。


一旦リビングを覗くとスケッチブックとカメラだけがあって露伴本人は見えなかった。
水を流す音が聞こえてきたので裕也は洗面所へと足を向けた。
手を洗っている後姿に言いようのない愛しさを感じて、裕也はその身体で覆うようにして圧し掛かった。
そしてその腹部に腕を回して、そっと色気のあるうなじに口付けを落とした。

「ん、裕也ッ!」
「何だ?」
「やめ…あ、」
「ん〜?」

首筋に何度も唇を落として、わざと音を立てるようにすれば露伴は耳まで赤くして照れていた。
鏡に映るその顔は「色っぽい」と言う以外にどう表現すれば良いのか分からないように艶めいていた。
耳元で「露伴…」と裕也が囁くと、洗面台に両手を突いて辛うじて立っていられるような有様だった。

「大丈夫か?…仕方ねぇな、倒れんなよ?」

クタリとしてしまった露伴を片腕で支えながら、自分の手にハンドソープをプッシュして泡立てると
指の間や手首までしっかりと洗って、最後には露伴の手も合わせて泡を洗い流した。

「オッケ。…お〜い、終わったぞ?」
「誰の…せいだ…!」
「え〜と、俺なのか?」
「お前以外の誰が居るって言うんだ、このバカッ!!」

後ろから腕を回されて抱きかかえられている姿で怒っても、裕也を喜ばせるだけだということを彼は知らない。
案の定、裕也は嬉しそうに「悪ィな〜」などと口では謝っておきながら、スイと露伴を抱き上げてしまう。
急に身体が浮いて驚いた露伴は思いがけず悲鳴をあげて彼にしがみ付いてしまった。

「お、ラッキー。」
「反省しろ…!」
「ごめんな、愛してるぜ。」
「どうしてそうなる…」
「いやぁ、これも愛故っていうか、あんたが可愛いのが悪いんですよ。」
「…ッ!」
「あんたへのこの想いが無くなる時があったら、それは俺が死んだ時だな。きっと。」
「裕也…」
「愛してるよ、露伴。」

顎を引くようにして顔をひっこめている露伴の唇を掬うように裕也は口付けた。
次第に緊張を解いた露伴は、またしてもクタリとしてしまった。
心配した裕也が唇を離した瞬間、離れていく唇に追いすがるように露伴は自らのそれを押しつけた。
裕也は露伴の愛しすぎる行動に堪らない思いでその口腔を貪った。

(きっといつかもっと素直になってくれるよな。あ、死因が腹上死とかでも良いかもしれねぇなぁ…)

本人に知られたらその場であの世に送られてしまいそうなことを考えながら、裕也は寝室へと足を向けた。















言い訳:これまたR/A/D/W/I/M/P/Sネタですみません;
この曲はもう噴露しかないだろうと思った時にはすでに行動は終わっていました。
イメージを崩してしまいましたら本当に申し訳ありません!