仕事、後、青い春





イルーゾォが鏡の中で拗ねていた時、メローネとギアッチョは仕事の真っ最中だった。

相手がスタンド使いではない、とても簡単でつまらない仕事だ。
今回の仕事は、ターゲットが二人。
片方の血液は手に入ったが、もう一人の者はどうしても収集できなかったのだとか。

メローネだけでも完璧な仕事が出来ただろうが、万が一のことも考慮に入れ、リーダー命令で今朝早くに二人揃って家を出たのだった。





ターゲットと最高に相性の悪い女の子を見つけてスタンドを発現。
その際、『何番が好き?』と聞くのは忘れない。
メローネにとってはとても大切な質問であるのに、大抵の女の子は答えてくれない。
仕方がないのでメローネが選ぶ。

(だからいつも不完全なベイビィになってしまうんだ…)

そう思っているが決して口には出さない。
それを言ってしまえば、ベイビィがあまりに可哀想だから。
任務が終われば消される命。この子は一体何番目だったろうか?


「ありがとう、ゆっくりお休み。」


頭を撫でて最後にそう声を掛けてやることにしている。今日もそうだった。


プツン、とパソコンの電源を切って息を吐く。
隣ではギアッチョが半ばキレながら自ら凍らせ、ベイビィがバラしたターゲットであったモノを川に流す作業を続けていた。
本来ならば見ているだけ、付き添いで良かったのにも拘らず、ターゲットの言葉にカッとなって一瞬で氷漬けにしてしまったのである。


「ねぇ、ギアッチョ。仕事も終わったしさぁ、何か甘いものでも食べに行かない?」

「あ゛?さっき昼飯食ったばっかじゃねぇか!」

「何言ってんのさ!甘いものは別腹だよ。」

「別腹?別腹ってよぉ、前から気になってたんだがこれって変だと思わねぇか?牛だったらまだ納得いくぜ、胃が4つもあるんだからな。
  だが人間には胃は1つだろ!?何なんだよ、どこにあるってんだよ!別の腹ってのはよぉッ!!」


納得いかねぇ!と怒りの向きがおかしな方へ行っていると気付いているのだか、いないのだか、
ギアッチョは使っていたシャベルも放り投げてメローネの方へと向き直った。

「それにしても、今日のお前の格好は一段とイカ レ てやがるな。」

「イカ し てるだろ。買ったばかりなんだ!特に胸元のレースが…」

「お前が筋トレ好きの見せたがりの変態だってのはよく知ってるが、
  そういう女物のヒラヒラした服だとかやけに露出の高い服に
  必要以上に割れた腹筋やムキムキの腕ってのは不釣り合いじゃあねぇのか?」

「何?抱くならもっと柔らかい方が『イイ』ってコト?」

「バッ!!!何言ってやがる!」

ギュ〜ッと抱きついてきたメローネに、赤くなりながら口では「離れやがれッ!」とギアッチョは言ったが、
甘えてくる変人…もとい、恋人を振り払うことは無かった。

「ん〜ッ!ギアッチョ大好き!」

「ウルセー…」



メローネをくっつけたままギアッチョは二人が乗ってきたバイクへと近付いて行きそれに跨った。
メローネも大人しく後ろへ座り、愛する人の腰へと腕を回してあまりに力を込めてしがみついたのを怒られた。
どこへ行くとも言わず、また聞かず彼らは走り去った。おそらくは甘いものを求めに。

楽しそうに笑いあって行き過ぎる二人は見た人皆がこう思う程に幸せそうだ。

「ああ、青春の恋ってのは良いものだな!」