見せつけよう





今、俺はすごーく幸せ。
大好きな人と二人っきりでデートしてるから!
その愛しい人は落ち着いてて、イケメンで、頼りになって、何より俺を大事にしてくれる、自慢の彼氏。
女の子とみればすぐに声を掛けて俺を困らせるけど、今ではもう慣れた。
だって、いちいち嫉妬してたら本当に俺の心が疲れちゃうし、俺の事が一番だって分かってるから心配してないんだからねェン!


「どうしたんだ、ジョセフ。さっきからニヤニヤして。」
「えッ!な、何でも無いよ!ってかシーザーちゃん見てたの?」
「悪いか?せっかくデートしてんだからお前の顔見ていてぇじゃあねぇか。」
「ううん、全然悪くないよ!嬉しい!!」


そっか、と言って笑い掛けてくれたシーザーちゃんの表情はとっても柔らかであったかくて恰好良かった。俺はいつもの事ながら見惚れてしまう。
こんなにも素敵で色男な彼が俺の恋人として隣に居てくれることが誇らしい。
彼を見せびらかしながら世界中を旅してみたいと思う。俺の恋人なんだぞ、って!
こんなこと思っているなんて知られたら呆れられちゃうかな?
シーザーちゃんも同じようなこと思ってくれてたら良いなァ…


「腹減らねぇか?」
「あれ、もうそんな時間だっけ?」
「まだ少し早いがこの近くに美味いピッツァの店があるんだ。」
「良いね!行く行く〜♪」
「よし、決まりだな!」
「あ、デザートはジェラートが良い!」
「Si. 行きつけのジェラテリアに連れて行ってやるよ。」
「やったぁ!」


喜んでいると、シーザーちゃんは俺の頭をぐりぐり撫でてくれた。
なんだか子供扱いされている気がしないでもなかったけど、特別なんだって感じられて嬉しかった。
それに、エリナおばあちゃんによく頭を撫でてもらったのを思い出して懐かしくもあった。


ふと目を道の反対側にやると幸せそうに歩くカップルが居た。女の子はもたれるようにしてその彼氏の腕に抱きついていた。
羨ましいと感じる反面、男同士でやったらちょっと駄目かな、と考えていた。


(やっぱり普通じゃあないし、変に見られたらイヤだもんね。)

残念、と小さく溜息をするとシーザーちゃんがこっちを見てきた。

「溜息なんてどうしたんだ?」
「別に…でも俺が女の子だったら堂々とイチャつけたのになぁって思ってたの!」
「?…あぁ、あれか。なんだ今から腕組むか?」
「うん。…ッて、エェ!?」
「何だよ、恋人なら普通だろ?」
「それは、その、そうかもしれないけどさ。…良いの?」
「何がだ?」


俺は呆れた。というか馬鹿らしくなった。
シーザーちゃんのためと思って我慢してたのに、本人が『普通』のことだって言うなんて…
でも、シーザーちゃんが気にしないってンなら遠慮することもないよね!
だから俺は不思議そうにしているシーザーちゃんの腕に両腕で抱きついてやった。


「なんでもないよ!…へへ。」
「…?」


まだ俺の行動を変に思っているのかシーザーちゃんは顔を覗き込んできた。それに笑顔で応えて、嬉しいと伝える。彼もまた笑顔になって幸せな気分は増していった。


腕を組んだまま俺たちは街を歩いた。
驚いて目を丸くしてるヤツ、物珍しそうに見て来るヤツ、嫌悪感をむき出しにしてるヤツ、色んな人間が居たけど、微笑ましそうに見てくれる人、何やら喜んでくれてる人なんかも居て、自分が想像していたよりも平気なんだって分かった。
それが本当に嬉しくてちょっと泣けてきそうだったけどなんとか我慢した。だって心配掛けたくなかったし、恥かしいから。


「な、平気だったろ?」
「…え?」


不意にそう言われて俺はシーザーちゃんの顔をまじまじと見つめてしまった。


「な、なんで俺の考えてたこと分かっちゃったの!?」
「あのなぁ、俺と二人っきりの時のお前は考えてること顔に出すぎだ。いつもハッタリかますときは良いのにな。」
「ウソ…」


恥かしい、なんて言葉では片付けられないほどに恥かしかった。それと同時にシーザーちゃんがカッコ良すぎて死にそうになった。
顔が赤くなるのが分かるほどに熱くて、思わず両手で顔を隠した。
だってシーザーちゃんってば俺が考えてること全部分かってて、それで俺の為に平気な振りしてくれたんだよね…?


「うぅ〜…シーザーちゃん。」
「何だ?」
「カッコ良すぎ。大好き。」
「知ってる。俺もお前を愛してるからな。」


俺は幸せすぎて昇天しちゃうんじゃあないかって不安になった。
まぁそんな心配は杞憂に終わったんだけど。
とにかく俺たちは、一人は恥かしさに顔を隠して、もう一人は上機嫌に鼻歌まじりで昼食を取るために町を歩いた。
もちろん、腕はしっかりと組んだままで。