ついにボスの隠れ家に乗り込む日が来た。 トリッシュを連れてジョルノとブチャラティ、リゾット、ティッツァーノが交渉(?)に向かった。 「良いですか?テッィツァーノさんが手引きをしてくれますから、僕たちはただボスに会えば良いのです。分かりましたね。」 「ああ。トリッシュ、すまないな。」 「良いのよ、ブチャラティ…!あなたの助けになるのなら。」 「行きますよ。」 溜息交じりにティッツァーノは声を掛ける。皆は真剣な表情になり頷く。 それを確認してから彼はボスに連絡を取った。 『ボス、今からそちらへ伺います。娘さんも一緒ですよ。』 『ティッツァーノか。分かった、待っているぞ。』 「随分と呆気ないものですね。」 ケータイを切ったティッツァーノにジョルノは鳩が豆鉄砲を食らったような顔で聞いた。 他の面々も同じような心情でティッツァーノを見ていた。 「あぁ、どうしても娘に会いたいんだそうですよ。」 「うぇ…。」 トリッシュは心底嫌そうに顔をしかめた。 「ボス、入りますよ。」 「入れ。」 許可を得て面々はボスの待つ部屋へと入っていった。 「何だお前らは!」 「待って、Padore.この人たちは私を守ってくれた大切な仲間なのよ。」 「お…お前は、トリッシュ?わが娘、トリッシュなのか!?」 『えぇッ!おねぇちゃんが来てるんですか、ボス?』 「ドッピオ、少し待て…オイッ」 『初めまして、おねぇちゃん!僕はドッピオです。ずっと会えるのを楽しみにしてたんだよ!』 いきなり独り芝居を始めたボスに呆気にとられていた一同だったが、 ジョルノはいち早く自分を取り戻し、トリッシュに話し掛けているドッピオと言う少年?に声を掛けた。 「あの、ドッピオさん。アナタはボスの何なのですか?」 『僕はボスの右腕です。ボスを守るのが僕の使命、とっても大事な役なんです!』 「右腕って…同じ人間じゃないの!」 『何の事ですか?って、アレ?』 とぉるるるるん、と口をとがらせて奇妙な表情でそう言ったドッピオは、 入口で無表情に立っていたリゾットの頭巾を強引に掴んで引きむしると『もしもしボス?』と電話に出るように言う。 「ドッピオ、今すぐ変われ。良いな。」 『Si、ボス。…おねぇちゃん、またね!』 ゴゴゴゴゴ、と音が聞こえてきそうな雰囲気を漂わせてボスがその口を開いた。 「私がこのパッショーネのボス、ディアボロだ。お前たち、よく娘を連れて来た。」 「あの、ボス。今のドッピオと言うのは?」 ブチャラティの質問にディアボロは答えた。 「気付いたら私の中に居た。ドッピオは自分が私の二つ目の人格だと言うことに気づいていない。 トリッシュのことを姉と思っているらしい。…どうだ、弟だぞ?」 ぎこちない笑みを向けたディアボロを、その娘は「気持ち悪い」と言ったような目で見てブチャラティの陰に隠れた。 父は大層ショックを受けてしょぼんとしていた。 そこへジョルノが真っ黒い笑みを湛えて声を掛ける。 「ボス、いやディアボロさん。僕はこの組織が欲しいんです。そのボスの座を降りてはもらえませんかねぇ?」 「な!何を言って…」 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄、無駄ァッ!!」 ジョルノは容赦無くディアボロの顔をラッシュで殴りつけた。 皆が驚く中、ジョルノはティッツァーノに小さく合図して血だらけでぼろ屑のようになったディアボロに何事かを耳打ちさせた。 それを聞いたボス、いや今となってはもう元・ボスと言う方が正しいディアボロはがっくりと色を失くして小さく答えた。 「わ、分かった。……でもトリッシュとは会わせてくれ。」 「仕方ないですね、トリッシュどうします?」 いきなり話を振られて彼女は「え…あ、私?」と動揺していたが、仲間の顔を順に見まわして、少し考えてから答えた。 「良いわよ。一応私の父親なんですもの。それにあの子、ドッピオともお話してみたいわ。」 そう言われてディアボロはパァァア!!という効果音が聞こえてきそうなほどに表情を明るくして「Meno male , grazie…!!」と言った。 娘に会うことを許されただけでお礼を言うとはなんとも哀しいことだが、今までずっと彼女を放っておいたことを考えれば自業自得とも言える。 そう感動していたディアボロはぐったりとして気を失ったかのように倒れ込んだ。 しかしその一瞬の後にはボロボロながらも若々しく元気のいいドッピオが現れた。 「ボス、ボス…!?って、うわぁあ!おねぇちゃん、どうして僕はこんなにもボロボロなの?」 「え?」 トリッシュはどうしよう、と目で助けを求めたけれど皆関わり合いたくないようでスイッと視線を逸らした。 ジョルノは開き直ったように肩をすくめていた。(後で覚えておきなさい…)と彼女は皆を恨んだ。 「そう、ね…ちょっとした喧嘩に巻き込まれたのよ!驚いたわ、ブチャラティとリゾットがいきなり喧嘩し出すんですもの。ね、そうよね皆?」 違うとは言わせない雰囲気を漂わせてトリッシュは皆に聞いた。 ジョルノは面倒そうに「はい、そうですよ。」と、ブチャラティは「あ、あぁ。そうだったな、悪かったよリゾット。」と何とか話を合わせ、 「えぇ本当に驚きました。」とティッツァーノはにこやかに、そしてリゾットは「……気にしてない。」と少し不満そうに答えた。 純粋なドッピオは「そうだったんですかぁ。」と素直そうな顔で頷いていた。 ドッピオと別れてから、一同は気を揉んで待っているだろう仲間達の元へと帰ることにした。 その移動の車の中でジョルノは零した。 「何とも呆気ないものでしたね。なんだか不完全燃焼です。」 「平和が一番ですよ、ジョルノ様。血が流れずに済んで良かったじゃあないですか。」 「…いや、ディアボロは血だらけでボロボロだったぞ?」 「しぃッ!それを言ったら駄目よ、ブチャラティ!」 「意味が違うと思うが。(……俺の頭巾。)」 「こうなったら僕の就任披露パーティーは超ド級のゴージャスなものにしましょう!」 「そうですね!」 俄然ヤル気になった二人に残りの者はやれやれと溜息を吐いた。 何はともあれ、ジョルノはパッショーネのボスの座を手に入れた。 それに間違いは、無い。 その頃ドッピオは新しい電話を探していた。 『とぉるるるるん!』 「どこで鳴っているんだ?これは変な頭巾だし…」 |