何故、僕を生かしたんだ…… 頼んでもいないのに何故…… そもそもこれは生きていると言えるのか? 幾つものコードに繋がれて、自分の身体を動かすことさえ出来ないでいるこの状態を。 言葉を発することも出来ずに、ただ眼だけを動かしていることが、生きていると…? 僕は望んでなどいなかった。 あの時あのまま死んでしまいたかった。 仲間のために格好良く命を落として満足したつもりだったのに…… 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い 僕は彼が憎くて堪らない。 彼の胸倉を掴んで大声で罵ってやりたい。 『どうして僕を助けた…!!!』 彼はおそらく何を言われているのか分からない、という顔をするのだろう。 『こんな状態で生きていると言えるか!? 僕は納得出来ないッ!!!!』 きっと彼は僕を宥めようと肩に手を伸べるだろう。 それを勢いよく振り払って言ってやる…! 『迷惑だったと言っているんだよ!!! 僕はあのまま死にたかった!!』 ああそうだよ。これこそが僕の本心。 彼は目を見開いて絶句するだろう。 追い打ちをかけるように僕は言うんだ。 『今すぐ僕を殺せ!』 彼の美しい緑色の瞳は色を失うだろう。 当然の報いだ…! 僕はこんなにも苦しんでいる。 僕はこんなにも屈辱的な格好にされた。 僕は決して彼を許さない。許せない。許してなどやらない。 僕と共に死ねば良い。 そうだ…… そうだよ…! 僕と一緒に死ねば良い…!!! ハイエロファントは出せるだろうか? いや、あの瀕死の状態でさえあれほどの力を出せたんだ。 ここへ来る時の抜け殻のような彼なら一撃だ…… よし。 殺ろう。 次に彼が来たら、殺ろう。 そうだ。気配を悟られないようにしなければ。 DIOにも気取られなかった僕だ。出来る。 ガチャリ、と研究室(もはや病室とは言えない)のドアが開く。 いつものように彼が入って来る。 「おはよう、花京院。外はどしゃ降りでな、シャツまで濡れた。」 煩いな。 早く背を向けろよ。 「全くやれやれだぜ……」 そう言うと彼は思惑通り、僕に繋がった計器の数値を見るために背を向けた。 【 エメラルドスプラーッシュッ!!!! 】 心の中でそう叫び、ありったけの力を込めて彼の心臓目掛けて撃った。 今まで出そうと思っても出なかったスタンドがあっさりと出現した。 そして緑の閃光は彼の心臓を打ち抜いて計器をも破壊する。 ビーッ、ビーッと警告のサイレンが響き渡る。 彼は計器にもたれかかるように倒れたまま動かない。 上手くいった。 そしてもう一つ良いことがあった。 あの一撃で僕に繋がれた生命維持装置も破壊されたらしい。 酸素が来なくなって息苦しくなる。 首に管を繋がれて呼吸を維持されていたのが止まったのだ。 苦しくて無意識にその管を取ろうとしても腕は動かず、スタンドは出ない。 頭がガンガンと痛み、脈動が煩いほど聞こえた。 クラクラと目の前が回り、視界は明滅する。 身体が痙攣し始め、意識が遠ざかる。 ようやく逝けるのかと安堵して、僕は意識を手放した。 その後駆けつけたSPWのスタッフは、自らの血にまみれ驚愕の表情を浮かべた空条承太郎と 歪んだ、しかし満足そうな笑みを湛え窒息死している花京院典明を発見した。 |